共感時代を生き抜くために、幼児期に育むべき非認知能力
皆さんは、お子さんとともに過ごすなかで、以下のような悩みを抱えたことはありませんか。
- 最近のこども園や保育園っていろいろ教育もしているけど、どういう園を選ぶのがいいのかな?
- 子どもに教育が必要なのはわかるけど、どのような教育をすればいいのかな?
- これからの社会で、子どもにとって生きやすい育ち方ってどんなのだろう?
これらの悩みにお答えします。
これらの悩みの原因は、子どもが将来を安心して過ごすことができるような教育の内容がわからないという点に起因しています。
現在では様々な教育法がありますし、それぞれの園でも独自の教育法を取り入れています。
その中で、これからの時代を生きやすくなるような教育は何かという点から、どのような教育をしていくのか、どのような園を選ぶのが良いかについて解説します。
これからの時代は「共感の時代」
ここ10年程度、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が一気に広まりました。
SNSとは、Web上で社会的ネットワーク(ソーシャル・ネットワーク)を構築可能にするサービスのことをいい、インターネット上で「社会的なつながり」を持つことができるようなものを指します。
皆さんがお使いのTwitterやline、Facebook、TikTokもSNSです。
これらはいずれも、コメントやメッセージ、写真や動画を介して他者と社会的なつながりを持つことができるサービスです。
ツイートをすればリプライが返ってきますし、メッセージをおくれば返信があります。動画を投稿すれば、イイねが付きます。このように、何かを発信し、それに対して反応があるようなサービスです。
そして、今後はますますSNSの規模は拡大していきます。
ClubhouseやPinterestといった新たなサービスがどんどん提供されています。
また、新型コロナウィルスの感染防止の観点からも、対面でのコミュニケーション以上に、Web上での交流が重視されていくでしょう。
このSNSで重視されているのは何か。
それは、「共感」です。
Twitterで今日の出来事をつぶやいたところ、イイねがたくさん付き、リツイートもたくさんされた。これは、そのつぶやきの内容にみんなが共感したからです。
また、ヒカキンやはじめしゃちょーといったユーチューバーが人気です。
この人たちが人気なのは、もちろん面白い企画をしているとか、しゃべり方が面白いというものもありますが、一番なのはその「在り方」に共感しているからです。
- やってみたかったことを代わりにしてくれている
- 言いたかったことを代わりに言ってくれる
- あこがれていた姿を代わりに見せてくれる
これらは、いずれも「共感」から出てくる感想です。
30年・40年前は知識があり、勉強のできる人が社会で重宝されていましたが、これからの時代は、みんなに「共感」されるような人材が貴重とされます。
一方で、人間の仕事はだんだん減っていくことが予想されています。
ここ10年でAIに関する技術が飛躍的に発展しており、今後もさらなる発展が想定されるからです。
AIとは、artificial intelligenceといい、人工知能のことをいいます。これからの時代は、AIを搭載した機械が自ら考え、自ら仕事をするようになります。
その結果、今後数十年でいくつもの仕事がAIによって奪われると試算されているのです。
社会の在り様が大きく変わっていくことになります。
その中でも、AIが人間に代替することができないのが、この「共感」です。
AIには人間の感情を理解するのが非常に難しく、その感情を複数人で共有するのが「共感」なのですから、AIによる代替は現在の技術では不可能でしょう。
以上から、これからの時代を生き抜くには、人に「共感」する力と人から「共感」される力、いわゆる「共感力」が非常に重要になってきます。
共感の時代を生き抜くのに必要な「非認知能力」
それでは、「共感力」を持つにはどのような能力が必要なのでしょうか。
結論から言えば、共感力を持つために非認知能力を育むべきです。
非認知能力とは、認知能力に対する概念です。
認知能力とは、読む力、書く力、計算する力など、点数で数値化できるような能力です。IQ(知能指数)などが有名です。
一方で、非認知能力とは、認知能力以外の部分をいい、例えば自尊心、自己肯定感、自信、共感、協調性、社交性などが考えられます。
そのため、非認知能力を育めば、協調性や社交性、共感などが鍛えられ、共感する力・共感される力も成長します。
非認知能力を育むことにより、「共感」の時代を乗り切ることができるようになります。
非認知能力を育むには幼児期の教育が重要
そして現在、この非認知能力を育むには幼児期の教育が非常に重要だと考えられています。
2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授の著書「幼児教育の経済学」を簡単に説明すると以下のとおりです。
人生で成功するかは、認知的能力だけでなく、非認知能力も欠かせないものであり、 それらは幼児期に発達し、その発達は家庭環境によって左右される。子どもが成人後に成功するかどうかは幼少期の介入の質に大きく影響される。それは、スキルがスキルをもたらし、能力が将来の能力を育てる。幼少期に非認知能力を幅広く身に着けることが、その後の学習をより効率的にし、それによって学習することがより簡単になり、継続しやすくなるからである。 それに対し、成人後のカリキュラムは効果が薄い。
この本は、幼少期における平等な密度ある教育の実施が、社会の経済を向上させ、生涯にわたる不平等を低減するという主張のなかで語られているものです。
大人に教育する以上に幼児期に教育をしっかりしておく方が社会的に有益だという話ですね。
ただ、その中でも個々の子どもの教育効果についても語られているのが、上記の部分です。
そして、人生で成功するのに非認知能力が欠かせないことを示すデータとして、ペリー就学前プロジェクトとアベセダリアンプロジェクトの例が挙げられています。
これらの実験は、いずれもきちんとした教育を受ける機会のない子どもたちに、非認知能力を育むことを重視した教育を施した結果について調査したものです。
この実験では、いずれも大人になった後、教育を受けている場合には、教育を受けていない場合に比して、非認知能力が向上し、収入などが改善したという結果が出ました。
ここで、収入が改善したという実験結果が出ていますが、大事なのは収入ではありません。
大事なのは、幼児期の適切な教育によって非認知能力が向上したという点です。
非認知能力の向上によって、人生の選択肢が増加し、その結果収入を得たに過ぎないのです。
非認知能力を育む教育
それでは、非認知能力を育む教育とはなんでしょうか。
少なくとも、認知能力を育むのに重視される、書き取りや計算といったものではないことは明らかです。
非認知能力とは、自尊心、自己肯定感、自信、共感、協調性、社交性などの認知能力以外の部分です。
なので、これらの能力を育むような教育が該当します。
近年では、オルタナティブ教育が注目されています。
オルタナティブ教育とは、「非伝統的な教育」や「教育選択肢」とも言い、主流または伝統とは異なる教授・学習方法を意味します。
具体例を挙げるなら
- モンテッソーリ教育
- レッジョ・エミリア教育
- シュタイナー教育
などです。
これらオルタナティブ教育の特徴は、いずれも非認知能力に関する教育に力を入れている点です。
非認知能力の向上を強く意識しているので、家庭での子育てにおいても参考になる部分は非常に多いと思います。
非認知能力を育む園の選び方
そして、実際に上記の教育法を取り入れている園もあります。
では、オルタナティブ教育のみが非認知能力を伸ばし、そういった教育法を採用していない園では非認知能力を伸ばせないのかというと、決してそうではありません。
オルタナティブ教育では非認知能力の向上について強くメッセージを出しているのに対し、従来の園運営ではそのメッセージを出していないだけなのです。
多くの園においても、今まで言葉にしていなかっただけで、非認知能力を向上させる取り組みをずっと続けてきています。
例えば、大きな制作物をみんなで作る時、誰がどの場所を担当するか、どのようなものを作るか、みんなで話し合って決めます。一つのものをみんなで作る時には、共感や協調性、コミュニケーション能力といった非認知能力が鍛えられるのです。
他にも、運動会やふだんの遊びの中でも、他人とのかかわりを学び、自分が何をしたいかという自主性を学び、非認知能力を育んでいきます。
オルタナティブ教育と従来の教育の違いは、非認知能力の個人的な面を重視するか、他人とのかかわりの面を重視するかの違いにあると考えます。
そして、従来の教育法であっても、近年はオルタナティブ教育の思想を取り入れ、より非認知能力の個人的な面を育む意識をもった園も増えています。
ですので、〇〇という教育法を取り入れている!!というだけで安易に園を選ぶべきではないと考えます。
大事なのは、園の先生が子どもの自主性を尊重し、一人の人間として接しているか、一方的に決めつけたり、子どもの自由を理由なく制限していないか、という点です。
それが直感的にわかるのが園見学です。
園を選ぶ際には、必ず園の見学時に、園児と先生の様子をしっかり見るようにしましょう。
まとめ:子どもの非認知能力を育んで、「共感」時代に対応できる大人になろう
今回は、これからの流れである「共感」時代を生きるために必要な非認知能力と、その能力を育むための園の選び方について紹介しました。
お家でできる非認知能力向上法として、「プロセスを褒める」と「お手伝い」です。
何かをやり遂げた時に、「すごいね」「偉いね」といった結果や才能を褒めるのではなく、「いっぱい練習したね、頑張ったね」とプロセスを褒めるようにしましょう。
非認知能力のうちの一つである自己肯定感が高まります。
自己肯定感を高める方法については、こちらの記事で紹介しています。
もう一つは、お手伝いです。
お手伝いは、子どもの自己肯定感を高めるだけでなく、協調性や共感力を鍛えることもできます。
自分でやり切ったという思いが自己肯定感を高めますし、いっしょに何かを成し遂げるため、協調性や共感力を養えます。
普段から試してみると、子どもたちの成長を実感できると思いますよ。