幼稚園は教育、保育園は保育はもう古い。現代の園の考え方
こんにちは。
皆さんは、子どもの入園先を探す際に以下のように考えたことはありませんか。
- 幼稚園は3歳から入れる教育施設
- 保育園は0歳から入れる保育施設
この考えから、
幼稚園は教育に力を入れている。
それに対して、保育園は保育施設なのだから預かるのがメインで教育には力を入れていない。
と、考えてしまいがちです。
その考えは一方では正しいのですが、現実にはそう単純には決まっていません。
以下で詳しく説明していきます。
保育施設の分類について
幼稚園とは
幼稚園とは、小学校や中学校と同じ学校教育法に基づく「学校」で、文部科学省の管轄です。
そのため、幼稚園の運営目的は就学前の「教育」にあるとされ、親の就労の有無に関係なく満3歳児から入園が可能です。運営目的が教育なため、教育標準時間の4時間程度で子どもを預かります。
ただし、満2歳児から通うプレクラスを用意している園もあります。
そして、そこでは幼稚園教諭免許状を持つ職員が先生として働いています。
保育園とは
保育園は正式名称を保育所といい、児童福祉法に基づく「児童福祉施設」で、厚生労働省の管轄です。
運営の目的を親の就労等に伴う「保育」にあるとして、親の就労等により保育の必要性がある場合に0歳児から預かります。運営目的が保育であるため、保育の必要性の程度に応じ、基本的に8時間または11時間預かることになります。
そして、そこでは保育士資格を持つ職員が先生として働いています。
認定こども園とは
認定こども園とは、幼稚園と保育園の両方の機能を併せ持ち、教育・保育を一体的に行う施設で、内閣府の管轄です。
教育・保育を一体的にとらえ、子どもの年齢にもよりますが、保護者の就労の有無にかかわらずに受け入れます。
認定こども園には、幼保連携型・幼稚園型・保育所型・地方裁量型の4つの種類がありますが、例えば幼保連携型では保育教諭という保育士資格と幼稚園教諭免許状の双方をもつ職員が先生として働いています。
比較的最近できた施設の類型で、新設の園として認定こども園になる場合もありますが、幼稚園や保育所から移行してできた園も多いです。
実は保育園であっても教育は行っている。
さきほどの類型をみると、幼稚園は教育施設で保育園は保育施設なのだから、やっぱり幼稚園は教育に力をいれていて、保育園は教育に力をいれていない、という風に感じてしまいますね。
しかし、そういうわけではないんです。
幼稚園は文部科学省の出す幼稚園教育要領に基づき、保育園は厚生労働省の出す保育所保育指針に基づき、幼保連携型認定こども園は幼保連携型認定こども園教育・保育要領(教育・保育要領)に基づき、そのほかの認定こども園も教育・保育要領にならって、そしてそれぞれ施設運営を行っています。
これらの要領等には、施設の運営にあたっての教育・保育の基本的な考え方や内容が定められており、どの施設もその考え方に従って施設運営を行っているのです。
たとえば、幼稚園教育要領にはこのように記載されています。
第1 幼稚園教育の基本
幼稚園教育要領
幼児期における教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり,幼稚園教育は,学校教育法第22条に規定する目的を達成するため,幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行うものであることを基本とする。
このため,教師は幼児との信頼関係を十分に築き,幼児と共によりよい教育環境を創造するように努めるものとする。これらを踏まえ,次に示す事項を重視して教育を行わなければならない
1 幼児は安定した情緒の下で自己を十分に発揮することにより発達に必要な体験を得ていくものであることを考慮して,幼児の主体的な活動を促し,幼児期にふさわしい生活が展開されるようにすること。
2 幼児の自発的な活動としての遊びは,心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習であることを考慮して,遊びを通しての指導を中心として第2章に示すねらいが総合的に達成されるようにすること。
3 幼児の発達は,心身の諸側面が相互に関連し合い,多様な経過をたどって成し遂げられていくものであること,また,幼児の生活経験がそれぞれ異なることなどを考慮して,幼児一人一人の特性に応じ,発達の課題に即した指導を行うようにすること。
そして、第2章のねらいとして、健康、人間関係、環境、言葉、表現の要素が挙げられています。
それに対して、保育所保育指針ではこのように記載されています。
イ 保育所は、その目的を達成するために、保育に関する専門性を有する職員が、家庭との緊密な連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行うことを特性としている。
(2) 保育の目標
ア 保育所は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である。このため、保育所の保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために、次の目標を目指して行わなければならない。
(ア) 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。
(イ) 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。
(ウ) 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。(エ) 生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。
(オ) 生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。
(カ) 様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。
保育所保育指針
このように、幼稚園だけでなく、保育園においても保育所という環境のなかで幼稚園と同様の意識をもって教育を行うことを前提としているんです。
そして、幼稚園と保育園の両方の機能をもつこども園は、教育・保育要領で、文言は少し変わりながらも同じ意識をもって子どもの教育について規定されています。
それぞれの園は要領・指針をもとに運営されている。
以上のとおり、それぞれの園は要領・指針に記載されている教育をねらいを達成するために、様々な取り組みを行っています。そのため、園ごとに教育内容が変わってきます。
ある園では、読み書き、そろばんや絵画教室に力をいれる。
また他の園では、リトミックや音楽教室などに力をいれる。
またある園では、運動教室や団体活動に力をいれる。
どの園もねらいを達成する方法を模索しながら、園の理念にそって色々と教育をしていきます。
そして、そのうえで有名小学校への進学を踏まえた教育をする園もでてきます。
ただし、どの園も要領・指針に基づいて教育・保育方針を決定している以上、目指す先はどの園も大きくは変わらないことになります。そのうえで、園として特に力を入れる部分が変わってくるというわけです。
社会性に力を入れている園を選ぶのか。
それとも、個人の自由を尊重している園を選ぶのか。
大事なのは、子どもにとって相性が良いか、そして、どの分野を伸ばしてあげたいかを保護者がしっかりと考えることです。
黙々と遊ぶのが好きな子に団体行動に力を入れている園に通わせると、その子が負担に感じるかもしれませんし、苦手を克服するという意味で良い影響を受けるかもしれません。そういった相性を見極めたうえで、子どもが過ごしやすい園を選んであげると良いでしょう。
要領・指針外の認可外保育施設
一方で、これまでした話が該当しない保育施設があります。
それは、「認可外保育施設」です。無認可保育所ともいったりします。
認可外保育施設とは児童福祉法上の保育所ではありますが、都道府県知事等の認可を受けていない保育施設のことです。ただし、施設を設置するには都道府県知事等に対して届出が必要です。
厳しい認可基準を満たしていない分、緩やかな基準でもって施設を開始できるため、小規模保育所などが多いです。
子どもの安全確保等の観点から、劣悪な施設を排除するために、厚生労働省にて「認可外保育施設指導監督基準」という規定が定められており、国の基準により年1回立入調査が行われます。
ここで、認可外保育施設指導監督基準のうち、保育の内容に関する部分を見てみましょう。
5 保育内容
認可外保育施設指導監督基準
(1)保育の内容
ア 児童一人一人の心身の発育や発達の状況を把握し、保育内容を工夫すること。
イ 児童の安全で清潔な環境(居室、寝具等の清潔)や健康的な生活リズム(遊び、運動、睡眠等)に十分配慮がなされた保育の計画を定め、実行すること。
(ア) 児童の生活リズムに沿ったカリキュラムを設定し、かつ、実行することが必要であること。
(イ) 必要に応じて入浴させたり、身体を拭いて児童の身体の清潔さを保つことが必要であること。
(ウ) 保育の実施に当たっては、沐浴、外気浴、遊び、運動、睡眠等に配慮すること。
(エ) 外遊びなど、戸外で活動できる環境が確保されていることが必要であること。
ウ 漫然と児童にテレビやビデオを見せ続けるなど、児童への関わりが少ない放任的な保育になっていないこと。
エ 必要な遊具、保育用品等を備えること。
年齢に応じた玩具、絵本、紙芝居などを備えることが必要であること。
なお、大型遊具を備える場合などは、事故防止のため、その安全性の確認を常に
行うこと。
どうでしょう。要領・指針にあった教育の方針については一切規定されていません。
もちろん、保育内容の工夫については、保育指針を十分に理解した上で進めると考えられていますし、職員に保育指針を理解する機会を設けるよう規定も定められています。
しかし、具体的な教育の方向性はこの基準では示されていません。
そのため、教育要領や保育指針では対応できない教育法(近年、オルタナティブ教育と呼ばれるものです。)を実現する場合に認可外保育施設として活動する園も多いです。レッジョ・エミリア教育やシュタイナー教育などがこの類型でしょうか。
ただ、基準は認可園に比べると緩い以上、子どもと教育の相性の有無に加え、安心して預けられるかどうかということもしっかりと考える必要があるでしょう。
まとめ: 園を選ぶときは子どもの個性や相性を見極めて
いかがでしたでしょうか。
近年では、幼稚園、保育園ともに幼児教育が行われることは前提になっています。
そのため、幼稚園だから、保育園だから、という決め方だけではなく、家や職場に近い園の中で最も子どもとの相性の良い園はどこだろうか、子どもが楽しんで過ごせる園はどこだろうか、という観点から園を探してみてはどうでしょうか。